テーマ 137 部下育成にあたって、理論的に押さえておくべき
“部下の基本欲求とほめ方、叱り方”
■職場での3つの基本欲求
アメリカの心理学者クレイトン・アルダファー氏が1972年に書著
「存在、関係性、そして成長:組織環境における人間の欲求」
という書籍の中でその内容を発表したモチベーション理論
「ERG理論」というのがあります。
アルダファー氏は、人の欲求は大きくこの三種類に大別できるとし、
この三つの欲求の頭文字をとって、
「Existence・Relatedness・Growth理論」
=「ERG理論」と呼ばれております。
・存在欲求(Existence)
安心・安全に生きていきたいという欲求。
職場では、給料や職場環境に関する欲求。
・関係欲求(Relatedness)
良好な人間関係を築き、人から認められたいという欲求。
職場では、上司、同僚、部下との関係に関する欲求。
・成長欲求(Growth)
苦手を克服し、得意分野を伸ばし、
自らの可能性や才能を発揮していきたいという欲求。
職場では、仕事を通して成長したいということに関する欲求。
上記の3つの欲求は、働く者が持つ基本的な欲求を
表していて分かりやすいと思います。
一方、実際の職場における会社の退職理由としてはいろいろありますが,
大きく分けると大体下記の3つが多いのではないかと思われます。
・上司、同僚など、職場の人間関係がうまくいかない
さらなる挑戦をしたい。
・仕事に成長を感じられない。仕事にやりがいを感じない。
・給料や労働条件に不満がある。
・さらなる挑戦をしたい。
退職理由と上記の「ERG理論」は、
ほぼ一致するのではないかと思います。
職場では、「給料」や「人間関係」、「仕事を通した成長」
の3つを同時に満たす必要がありますが、
実務的には、よほど「給与」が低い場合を除き、
「人間関係」や「仕事を通した成長」が重要な事項と思います。
管理職の方は、上記のような部下の方の基本的な欲求を
踏まえて指導育成にあたることが必要です。
■人格をほめ、行動を叱る
心理学者ジョアン・グルーセック氏の実験に
下記のようなものがあります。
ビー玉を使って遊んでいる子供何人かに頼んで、
友達にビー玉を分けてもらいました。
そして、AとBの2通りの言葉でほめ、比較しました。
A:「君は人の役に立つ素晴らしいことをした」
行動をほめる
B:「君は人の役に立つ素晴らしい人だ」
人格をほめる
その2週間後、
Aグループの子供のうち10%が、
Bグループ子供のうち45%が、
入院している子供にお見舞いのプレゼントを渡しました。
上記の実験からわかることは、
行動よりも人格を意識して訴えかけた方が
心に影響するということです。
NLPの主要な開発者であるロバート・デュルツ氏が提唱した理論に
「ニューロ・ロジカル・レベル」というものがあります。
この理論は、心の影響の受けやすさの順位を説明した理論です。
*NLPとは、Neuro Linguistic Programing
(神経言語プログラミング)の略称で、
別名「脳と心の取扱説明書」とも呼ばれる最新の心理学です。
「ニューロ・ロジカル・レベル」の体系
人格(自己認識・使命):Who(誰が?)
信念・価値(行動の動機付け):Why(なぜ?)
能力(戦略・計画):How(どのように?)
行動(活動・反応):What(何を?)
環境(機会・制約):When(いつ?)、Where(どこで?)
この 「ニューロ・ロジカル・レベル」には
以下のような特徴があります。
・上の階層に行くほど主観的に受け止め、
下の階層に行くほど客観的に受け止める。
・上の階層は下の階層に強い影響を及ぼすが、
その逆はあまり影響を及ぼさない
例えば
「あなたは素晴らしい」:Who
「あなたは素晴らしい価値観を持っている」:Why
「あなたは素晴らしい技術力を持っている」:How
「あなたは素晴らしい行動をした」:What
上に行くほど心への影響度合いが大きくなります。
心理学者ジョアン・グルーセック氏の実験や
ロバート・デュルツ氏の「ニューロ・ロジカル・レベル」理論から、
部下の方をほめる時は「行動」ではなく「人格」をほめる。
叱る時は「人格」ではなく「行動」を叱る。
上記2項目を管理職者として押さえておくことが重要です。
部下の方の指導育成は、「理」と「情」が重要といわれます。
部下の心をよく理解した上で、いうべきことは、
理論正しく話すことが大切になります。
部下の心を理解する上で、
今回ご紹介した理論を役立てて頂ければと思います。
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